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大正生まれの超頑固でお風呂が全然好きじゃない男性ご利用者さまをほとんど怒らせることなく入浴してもらう接遇

栄さん
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普通に「お風呂に行きましょう」では絶対無理!

介護職の皆さまにとっては、そういうご利用者さまに出会ったこと、少なからずあると思います。
もちろんご利用者さまと言っても十人十色、それぞれの思いがあって、それぞれ歩んできた歴史がある。
だから、まずは心にこう刻みましょう。

こちらの都合なんて、素直に聞いてもらえないのが当たり前!

うまくいったらラッキー、それで十分だと私は思います。
だって、例えば入浴介助にしたって、ほとんどのデイサービスでは午前中の内にすると思うのですが、
そんな明るいうちからお風呂なんて、普通の人は入りません。
時間内に手早く全員の入浴介助を済ませなければならない、なんていうのは完全にこちら側の都合です。
まずはそういう考え抜きに、その人のことを理解しようという姿勢から入るのが非常に大切です。
今回のケースは若干マニアックながらも、必ずどこかに共通するヒントはあると思いますので、
「あの人お風呂に入れるの難しいんだよな~」と悩まれている介護士の方は是非参考にしてください!

最初の声掛けが最重要!

これはデイサービスでのケースになりますが、まず到着して朝の挨拶から、いや、なんだったら
送迎に向かう車内から、すでに勝負は始まっていると言っても過言ではありません。
その方は大正生まれで、生まれ故郷は某山奥のとある村だったのですが、ここでは仮に『東川村』
としておきます。そしてその東川村は、かつて大洪水があり、そしてダム建設もあり村民全員で
最寄りの市内に移住してこられた、という歴史がある方でした。
認知症があるのですが、その村のことはとてもよく覚えており、また、誇りにも思っておられます。
なので、私はいつもそこを突きます。

おはようございまーーーーーーーす!
あれ~!?もしかして東川村のSさんじゃないですか!?

おお、ほうや!

そんでもしかして大正13年生まれじゃないですか!?
東川村でもいちばんですよね!

おうほうや!なんたよう知ってるんや!

という挨拶で、すでにSさんの心は私に鷲掴みにされております。(笑)
そして血圧測定をして、朝のお茶を飲んでいただいたところで…

『お風呂』というワードは、まだ敢えて出さない

「お風呂に行きましょう」なんて、朝一番で言われても、まずめんどくさい!と思うのが普通です。
誰だって、来て早々にお風呂なんてめんどくさい、そう思うのが当たり前ですよね、私だってそうです。
でも、他にもたくさんの方に、時間内に入れる必要があるのも確か。で、このように伝えます。

Sさん、ちょっとこっちに来て欲しいんです。

でも、このセリフにも前置きが必要です。朝の挨拶で伝えたのとまったく同じことを、もう一度伝えます。

あれ~!?もしかして東川村のSさんじゃないですか!?
ほんでもしかしてもうすぐ100才じゃないですか!?

フフフ…ほうや!
東川村でもいちばんじゃ!もう100才超えとる!

(実際はまだ100才ではありませんが、ここではそんなことはどうでもよいのです)

やっぱり!Sさんは凄いですね!
ほんじゃあちょっとこっちに一緒にいきましょうか~?

おう!どこでも行くぞ!

あ~、ありがとうございます!
ささ、こちらにどうぞ…!

という流れで、100%立ち上がって、一緒に浴場まで歩いてきて下さいます。
ちなみにこの流れ、というかその関係性が構築できていない職員が、伝えた場合は…

介護士

Sさ~ん、お風呂行きましょ~

なんて、何の準備もなく伝えてしまった時には…

なんじゃ!うるさい!俺はここから動かんぞ!

と怒り出され、手にしている杖を振り回してしまう…なんてこともしばしばだったそうです。
相手の心を常に考えることができなければ、真の接遇とは言えません。

浴場まで無事誘導できたら…

実はここまで来て、実際にお風呂が見えれば、もうそこまで嫌がられることはありませんでした。
そしてそこで初めて「あたたかいお風呂が沸きましたので、入りましょうか?」とお伝えします。
腕時計をされていれば、「濡れるといけないんで、時計を外してもらってもいいですか?」
と、まずは外しやすいものから取ってもらうのもひとつの方法かも知れません。いきなりズボンを
下ろすのも抵抗があるでしょう。靴や靴下から脱いでもらう、というのも良いと思います。
そしていざお風呂に浸かれば、大抵の方は『やっぱり気持ちいいな』と言って下さいます。
その『気持ちよさ』を感じていただくことこそが、私たちの使命なのではないでしょうか。
『時間内にお風呂に入れること』と勘違いしないよう、充分気を付けていきたいと考えています。
さらにもうひとつ大切な心構えがあるので、これを紹介して結びとさせていただきます。

『お風呂に入れてあげる』のではなく
『お風呂に入れさせていただいている』

あくまでもご利用者さまは『大切なお客さま』であることを決して忘れずに!
今日もおひとりおひとり、ていねいに。

栄さん

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